
【匠塾を始めた原点】
私が36年間の教員人生の中で、大きく価値観を変えられた一人の生徒との出会いがあります。
その生徒は、感情をうまく表現することが苦手でした。
ある日、怒りを抑えきれず、学校の壁を蹴り破ってしまいました。
そして、自分を正当化するために誰かのせいにしたり、強い言葉を発したりしました。
周囲から見れば、「問題を起こす生徒」と見られていたかもしれません。
しかし、私と二人で向き合う時間の中で、彼は別の表情を見せました。
「またやってしまった……」
「自分はやっぱりダメだ……」
彼の奥にあったのは、怒りではなく、
深い悲しみと自己否定でした。
私はその時、気づきました。
人は、表面に出ている行動や言葉だけでは、本当の姿は分からない。
荒々しい言葉の奥に、助けを求める心があるかもしれない。
誰かを傷つける行動の奥に、自分自身を責め続けている心があるかもしれない。
そして、その心の奥にある本当の気持ちに、自分自身が気づいていないこともあるのだと。
私は考えました。
穴の空いた壁を、ただ塞ぐだけではいけない。
彼自身がこの経験を「人生の転機」にするためには、
「失敗しても、やり直せる」という経験が必要なのではないか。
そこで私は、彼と一緒に壁を壊しました。
傷ついた壁板を一枚交換し、
壁紙を貼り直しました。
その時、彼がつぶやいた言葉があります。
「失敗って、やり直せるんやな……」
その言葉は、今でも私の心に残っています。
人は、失敗が取り返せないと思った時、
誰かを責めたり、
自分を責めたりします。
でも、人生は何度でも修復できる。
そのことに気づいた時、人はもう一度、自分を信じることができる。
この経験から、私の人を見る視点は大きく変わりました。
人を変えることは、私にはできない。
変化を用意することもできない。
その人自身が、自分で気づいた時に、本当の変化が始まる。
だからこそ、無理に変えようとしてはいけない。
信じて、待つ。
そして、その人自身が答えを見つけるための問いを届ける。
この想いが、匠塾の原点です。
子どもも大人も、
誰かと比べることで自分の価値を失うのではなく、
「自分には価値がある」
「もう一度、自分らしく歩き出せる」
そう感じられる人を増やしたい。
誰かになる人生から、
自分になる人生へ。
あなたは、本当はどんな自分で生きたいですか。